日本におけるターミナルケアは、どのような最期を迎えるか、どこで最期を迎えるか、本人や家族の希望、意思を現実化できるかどうか、など様々な問題を含んでいます。
「自分らしい最期」は、潜在的なものも含めると多くの人が望んでいるのではないでしょうか。
しかしながら、満足した最期を迎えている人はどれくらいいるのでしょうか。
本記事では、現代のターミナルケアが抱える問題点について考えてみたいと思います。
画像出典:gov.uk
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ターミナルケアの問題点1:医療者と患者のコミュニケーション不足
緩和ケア病棟の紹介時期が遅い
2003年に緩和ケア病棟に入院したがん患者の遺族に行われた調査で、緩和ケア病棟の紹介時期について「適切であった」と「遅い」の割合はほぼ同じとなっています。
「遅い」と答えた遺族からは、生前に緩和病棟の紹介について患者本人が「遅い」と話していた場合が約6割でした。
その理由として、家族や患者の気が進まなかったというものが約3割であるのに加え、「医師自身が緩和ケアについての説明に気が進まなかった」と遺族がとらえている答えも約半数となっていました。
これ以上の治療は難しい、ということを告げるタイミングは非常に難しいものですが、医師と患者の間でのコミュニケーション不足がうかがえます。
※参考文献:日本臨床倫理学会HP
紹介の速さと家族の満足度の相関関係を示す報告も
また、疾患によっては、家族が本人への告知や説明を拒む場合もあり、ターミナルケアについて誤解していたり、十分に心の整理をしないまま患者の状態が悪化するということも起こる可能性が示唆されています。
海外の研究では、紹介が遅いほど家族の満足度が低くなるという報告もあります。
日本においても早い段階で情報を提供し、患者や家族に考える時間や選択肢を与えることは必要なのではないでしょうか。
※参考文献:日経メディカル「3.ホスピス・緩和ケア病棟、在宅緩和ケアとの連携」
※参考論文:Late referrals to specialized palliative care service in Japan.
※関連記事:【岩本ゆりさんインタビュー第1回】「死」への怖れから看護師へ。意思決定支援スペシャリストの素顔とは。
ターミナルケアの問題点2:本人の意思を確認する機会が少ない
ターミナル期といっても、がんや進行性神経疾患などの疾患のほか、認知症や加齢による機能低下によって訪れる場合もあります。
意思疎通ができる間に、自身の人生や、最期の時間をどう過ごしたいか、どのような医療を受けたいかを話しておくことは非常に大切ですが、実際には、その時が来てから考えることになることも少なくありません。
その場合、本人の意思が十分に反映できなかったり、あるいは家族の心情が混乱してしまい患者本人の意図とは異なる治療が選択されることもあるのです。
※参考論文:箕岡真子「日本における終末期ケア“看取り”の問題点」
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