高齢化が進む現代社会ではますます医療の問題が深刻化しています。
その一つが終末期における患者さん自身の意思決定の問題。
病状が悪化し、患者さん自身がどうしたいのか、確認できなくなることがあります。
そのような事態に陥らないためにも、事前指示(Advance Directives)について知っておきましょう。
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画像出典:forbes.com
事前指示とは?
事前指示とは患者さんの意思決定能力がなくなった時の治療の選択を口頭か書面で示しておくことです。
一般的に事前指示には
- 1.代理決定人を決定すること
- 2.一般的な患者さんの価値観を知ること
- 3.個々の治療の選択
が含まれます。
治療法の選択に限らない「エンディングノート」
最近「エンディングノート」という名称で流行しているノートでは、入院中に、DNAR(患者本人または家族の希望で、心肺蘇生を行わないこと)や延命処置の内容に限定せずにメッセージを残すことができます。
例えば、「最期は家で家族に囲まれて、いろんな話をしながら死にたい」などという死に方、
「献体したい」「解剖して病気の原因をつきとめてほしい」などの死後の処置、
「眼球を提供したいので、〇〇へ連絡を」などの臓器提供、
さらには「密葬にしてほしい」「告別式はこのようにやってほしい」などという葬式の希望、
「家族に苦労させたこともあるが、私を許してほしい」などというメッセージがあります。
医療者としては患者さんの意思にそった治療法の選択を一番に知りたいのですが、患者さんにとっては人生の最期に伝えておきたいことは、治療法の選択だけではないということです。
法的効果を持たない事前指示書の問題
文書で事前指示を残したものをリビング・ウィルと呼ぶことが多いです。
※リビング・ウィルについて詳しく解説しているページはこちら!→リビングウィルとは? 尊厳ある死の迎え方を考える、生前の意思を尊重しよう
日本で用いられているものとしては、日本尊厳死協会が作成したものがあります。
現時点では日本において、これらの事前指示書が法的な意味を持っているわけではありません。
なので、事前指示書に従って治療をやめた時に、そのことを聞いていなかった遠い親戚などが治療をやめたことを訴えるという可能性が残ります。
これは大きな問題ですが、それでも事前指示書を作ることは患者さん自身にも、そのご家族にも納得いく治療を選択する手助けをしてくれるはずです。
さて、次は事前指示は具体的にどうすればいいのか。
その手順と内容についてお伝えします。
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