看護のアイちゃんとともに「本当の看護」を追究してほしい【広瀬純子さんインタビュー2】

 

本記事の目次

広瀬さんの看護観について

 

広瀬純子、看護観

 

――形としては「看護師」ではないという意味で、広瀬さんが「外」から見て現場の看護師さんに対する気づきはありますか?

 

今一番思うのは、看護師の資格をもっているだけで重宝される時代だからこそ、そこにあぐらをかいちゃいけないということですかね。

自分たちは看護師免許を持っているからお金をもらえるわけではなく、看護師として求められる仕事をしてこそのものだということは忘れずに、就職や転職をしてほしいと思っています。

たとえば、「ブランクあるんですけど、いいですか?」ではなくて、自分で復習・予習をしてくるという心意気は最低限持ってほしいと思います。

 

――改めてご確認する形ですが、「アイちゃん」の主眼は「効率化」や「時間短縮」ではなく、「質を是正したい」というところがポイントなのでしょうか?

 

その通りです。

時間短縮や効率化を主張される方も多いのですが、時間短縮というのはソフトがやるものではなく、看護師が自分で言語化する力がつき、表現力がつけばこその話だと思っています。

それをソフトだけに求めるのはお門違いだと思います。

 

更に言えば、他職種や他事業所など外部との連携だって、中身こそが重要だと思っています。

バイタルサインの共有一つとっても、その裏付けが書かれていないため、数字だけをヘルパーさんやケアマネさんに流してしまうと危ない場面がたくさんあります。

その数字が本当に正しく取れているのかも怪しかったりする。

 

このように、情報の共有だけが目的化してしまうと様々なところで弊害が出て、結局効率化や連携といった目的を達成することはできません。

個々人の工夫の中に、結果的に効率化や時間短縮に繋がるものはたくさんあると思っています

 

――特に訪問では、相手が分かるようにする工夫は大事ですよね。

 

そうですね。

訪問看護なんて自分のお城に他人が入ってくるわけです。

 

それに、今は情報社会なので、皆さん自分の病気とか調べています。

自分もわかっているし、病院でも言われてきたことを、自分の家に自分の孫くらいの子が押しかけてきて、「こんな事したらだめですよ」とか言われたら腹立たしく思うこともあると思います。

 

ですので、看護師が「どうやったらその方の心に響くように伝えることができ、行動変容を促せるのか」について考えることは非常に重要だと思います

 

――広瀬さんの今後の目標としては、もちろん「アイちゃん」を広めるところがあると思いますが、ご自身の「ビジョン」のようなものはありますか?

 

自分のビジョンはあるのですが、いまは「アイちゃん」の生みの親という自覚が強くあります

ですので、育てていかなければという想いがあります。

つまり、次の「アイちゃんの母」をたくさん作ること

そうしないと私はここからは出てはいけないだろうなとは思っています。

 

現在、他の営業マンも「アイちゃん」の営業をして回っていますが、導入だったり開発だったりという部分はやはり私が出向きます。

そういうこともあって、「次の人を育てないと安心して年を取れないぞ」と思っています。

案外いい年なので。(笑)

 

――まるで音符が飛んでいるかのような明るい話し口調なので重く聞こえないのですが、やっぱり言葉の端々で、広瀬さんの強い気持ちが伝わります。

 

急に私が倒れちゃったら困っちゃうので、定年までにどうにか。(笑)

 

――これから定年は伸びますよ!(笑)

 

(笑)

 

――すこし大きな話になりますが、今は看護でも、それこそ診療報酬の問題など変化が激しいように思います。今の流れをみていて、将来的な医療・看護・介護について思うところをお話いただければ幸いです。

 

今一番怖いなと思っているのは、変革の流れだと思っています。

私が訪問看護に入ったときなんて、まだまだ他のサービスと横並びで数も少なく、丁寧に仕事ができればそれで良かったのです。

 

しかし、異業種の方がどんどん参入していますし、運営手法に関しても沢山出てきています

中には儲けるためにグレーなことをしちゃう所が出てきて、今度はそこを叩くために制度がまた厳しくなっていく可能性は大いにありますよね。

これはいたちごっこで、そういう法人は次々に出てくると思います。

 

しかし、現場の看護師たちがやってる訪問看護の実務は、「こういうことを求められているんだよね」と思ってくれる看護師さんが一人でも増えれば変わってくるのかなと思っています。「アイちゃん」を使う使わないは関係なしとして。

そこを無視して、先ほどの話のようにソフトによる効率化の話だけが先に進んでしまうなどして、看護師さんのスキルが育たない環境が進んでしまうと、ちょっと日本の医療や看護が怖くなるんじゃないかなと思っています

 

――たしかにそうですよね。ツールは、使う人が理解を深めたり成長したりするのが本旨ですよね。その気が無いのはマズイことだと私も思います。

 

結局怖いですよってなりますよね。分かって使いましょう、と。

逆に良い話としては、若い世代の人たち、特に男性の看護師さんが今頑張っていらっしゃるので、それもちょっとおもしろいかなって思っています。

 

――男性看護師で訪問領域で活躍される方は結構増えていますか?

 

増えています。

今までは女性3人でとりあえず仲良しこよしで立ち上げて、だけど管理者とスタッフっていう立ち位置になると揉め事が起きて空中分解なんてことはよくあったのですが、そこに男性が一人入ると違うみたいなんです。

 

――それはおもしろいですね。

 

そうなんです。

あと、経営の目線があるので、しっかりコントロールができますよね。

 

また、男性が看護師というだけではなく、管理者さんの旦那さんだったり、経営者だったり、PTさんが経営者など、いろんな形が今できてきているので、そこも面白いなと思っています。

 

ユーザーさんの中でもトップが男性だというステーションさんは多いですよ。

 

――男性女性関係なく、看護師さんが普段からスキルアップのためにできることというのはありますでしょうか。たとえば外に出ていくとすれば、どういう場所がいいんでしょうか?

 

一番行きやすいのは自分の地域の勉強会や集まりで、まずはそんなに家から遠く離れていないところで「みんなどうしてる?」って勉強会がいいかなと思います。

わたしが訪問看護を始めた時に住んでいた交番の近くに今も住んでいるのですが、現場を回っていた時の勉強会のメンバーとはまだ付き合っています。

もう十年越しの付き合いで、非常にありがたい存在です。

 

実は「看護のアイちゃん」も、年に一回ファンの集いを行っています

近くのユーザーさん、それから近隣で訪問看護に興味ある方々に集まっていただいて、看護のアイちゃんの監修者である山内豊明先生にもお越しいただいて、公演と飲み会をやっています。

 

――それは、導入していない人も入れますか?

 

全然ありありです!

そこでご興味がある方も含めてユーザー様同士のネットワークができたらいいなと思っています。

フェイスブックでもお客様同士がつながっていたりはするのですが、やはりリアルではなかなか会えないので、そういうのもいいなと思っています。

 

――リアルな集まりだと、濃い情報交換ができたりしますよね。

 

わたしの場合は単なる飲み会だったりするんですけどね。(笑)

でも、それも自分の支えになりますし、新しい情報ももちろん入ってきます。

そこから仕事の話につながったりも。

 

――最後に、読者の方に向けて、アイちゃんに関するメッセージをお伝えいただければ幸いです。

 

自分が現場の時どこまでできていたかを考えると、偉そうに言える立場でもないですが。。。

どうせ仕事として看護をするのであるならば、「時間が過ぎればいい」だとか、「必要最低限でいい」という発想ではなく、「本物の看護」を追究して欲しいと思います。

 

先日Facebookの友達の書き込みで「ナイチンゲール誓詞」が書かれていて、「うわ、懐かしい…!」と思って、もう一度全て読み直してみました。

 

『われはここに集いたる人々の前に厳かに神に誓わん・・・』と始まりますが、これを見て、「はー、そうだったそうだった!」と思いました。

やっぱり学生の頃の原点に戻って、「何が本当の看護なのかな」「何が求められているのかな」というところを追い求めてほしいなと思いますね

それは病院であっても在宅であっても同じだと思っています。

 

その点、少なくとも在宅において、「アイちゃん」は非常に有能なパートナーですので、是非実際にその目で見ていただければ幸いです。

 

――広瀬さんからして、「本物の看護」というのは人それぞれだと思われますか?

 

おそらく、思いを込めてやっている看護師であれば本質的なところは同じだと思います。

自分が主役ではなく、サポートさせていただいているお客様それぞれに、医療の側面と生活の側面から少しでも役に立ちたいという気持ち

わたしにとっては、ただそれだけです。(完)

 

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