「死」≒「絶望」?
私がホスピスナースだと分かり、どう反応したらよいのか困ってしまう人達の心の中には、おそらく「ホスピス=死」つまり、「ホスピスナース=死ぬ人をケアするナース」と言う等式が浮かんでいるのだと思います。
そして、一般的な社会では「死」について話すことはできるだけ避ける、と言うのが暗黙の了解になっています。
「死」は「終わり」、「終わり」は「絶望」、つまり「死」は「絶望」である、という三段論法的発想のもと、誰も話などしたくないし聞きたくもない「死」の話はしないという結論に行き着いたのでしょう。
しかし、ホスピスナースがケアしているのは、生きている人達です。
この地球上で呼吸をしている全ての人達と同様、いつかは死ぬけれど、今は生きている。
ただ、一つ違うのは、その「いつか」がある程度近い未来であるという事がわかっているということだけなのです。
だからこそ、残された時間を悔いなく自分の生きたいように使って欲しい。
たった一度の自分の人生。誰だって、悔いは残したくないはずです。
そして、その人を大切に思う人達も、その人らしい最後を送らせてあげることで、自分自身も悔やまずにすむのではないでしょうか。
「わたしはホスピスナースです」
ホスピスナースが患者さんに出会うのは、すでにいわゆる「死の宣告」を受けた後です。
しかし、人は生きたように死んでいくもの。
私達は、その人の生きてきた軌跡を垣間見る事ができ、そして、患者さんと家族が納得してさよならを言う事ができた時、ホスピスナースとして、その人達の人生に少しでも関われた喜びを感じるのです。
ホスピスは、「死ぬ場所」ではなく「死ぬまで自分らしく生きられるようにサポートするケア」なのです。
私達ホスピスナースは絶望などしません。
なぜなら、全ての人の人生には価値があり、生まれてきた意味があり、そしてその身体が消滅した後も、その価値と意味は、その人を知る人々の心の中で生き続けるからです。
そして、そんな風に一人一人の人生の最終章に関わることの出来るホスピスナースという仕事は、私にとってどんな小説や映画よりも面白く、「生きる」ことの意味を学べる、終わりのない物語なのです。
ホスピスナースとしての経験を積み、こう思えるようになったとき、わたしの中に「ホスピスというものをもっと知ってほしい」と思う感情が湧いてきました。
そして、次第に自分からこう言うようになっていったのでした。
「わたしはホスピスナースです」
(完)
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