≪著者プロフィール≫ ラプレツィオーサ伸子
日本の大学病院で看護師として勤務後渡米、現在アメリカ人の夫、3人の子供と犬の世話に奮闘しながら、在宅ホスピスナースをしています。
少しでも日本のホームケアの発展に貢献したく、ここアメリカ東海岸から、在宅ホスピスの生の情報をお届けしたいと思います。
いつまでが「新人」?
あなたの中で「新人」はどのようなコト、ヒトを指しますか?
たとえば訪問看護をする為には、(アメリカでは)どの事業所でも最低1年の病院での看護経験が必須とされています。
また、ホスピスナースになるには、訪問看護の経験があった方がよいとされています。
実際、ホスピスナースになろうとする人達は様々な分野で看護経験を積んだ人が多く、私は就職してから4年間ほど、チームの中では一番年下でした。
そのうえ、アジア系は実際より若く見られやすく、しかも子供のような英語をもたもた話す為、チームの同僚や患者さん達からは、いつまでも「新人」扱いされていました。
私自身、認定看護師の資格を取ったとはいえ、チームの中ではまだまだ受身的な存在。
唯一重宝されたのは、東アジアの文化や生活習慣、死生観などについて、日本人としての意見や見解をシェアできる事くらいでした。
これは「新人」と呼ぶべきでしょうか?
それとも「若手」「中堅」と呼ぶべきでしょうか?
ホスピスナースとしての「自覚」を持つきっかけとなった、ネットワーク作りの活動
HPNA (Hospice and Palliative Nurses Association:ホスピス緩和ケア看護協会) のロゴが入った封書が私のもとに届いたのは、ちょうど5年目に入った頃でした。
それは、私が活動していた地域に支部局を発足する為の準備グループに参加しないかというお誘いでした。
私のもとに届いた理由は、ホスピス緩和ケア認定看護師を取った時、HPNAのメンバーになっていたからです。
認定看護師になったからといって、必ずしも協会のメンバーになる必要は無いのですが、毎月発行される雑誌や4年毎に更新する認定試験の受験料、関連出版物やセミナーのディスカウントなどの特典があり、情報源として、安くはない会員費を払う価値はあると思ったのです。
そして、この支部局発足準備のお誘いも、ホスピスナースとして見聞を広める良いチャンスかもしれないと思い、試しに覗いてみるつもりで参加してみることにしました。
その準備グループで、私は初めて自分の職場以外のホスピスナース達に出会いました。
私を含めてたった5人ではありましたが、同僚ではない同業者と話をするのはとても新鮮でした。
ただし、準備グループは本人の意欲のみによる自由参加なので、なかなかメンバーが定着せず、ネットワーク作りの難しさを痛感させられました。
それでも、私は地域のネットワークができれば、情報交換のみならず、勉強会やイベントを行ったり、ナースだけでなく地域住民やナーシングホームなどへの啓蒙活動、つまり、もっと「ホスピス」というものを知ってもらえるような活動まで広げていけるのではないかと思っていました。
同僚達に「こんなグループがあるんです」との声掛け、定例会や勉強会を宣伝する為の職場以外の近くのホスピスへのチラシ配り。
さらには、年に1、2回は様々なテーマで勉強会を行い、11月のホスピス週間では、色々な分野のゲストを招いてパーティーを開催するなど。。。
地道に活動を続けていきました。
こうして活動を続けるうち、同僚のうちの何人かはメンバーになり、グループも少しずつ大きくなっていきました。
また、私たちにとってもいい機会が得られました。
つまり、地域にホスピスナースのコミュニティーができ、自分とは違った環境で働くホスピスナースと会うことで、新しいエッセンスを吸収できたのです。
定例会の参加者が4~5人というさみしい時期が長かったものの、準備グループを立ち上げてから期限ぎりぎりの2年後。
私達は何とか必須条件をクリアし、ペンシルベニア南東部地域の支部局として、協会本部に認めてもらうことができました。
今思えばこの経験は、改めて「自分は『ホスピスナース』という『プロフェッショナル』の一人なのだ」という自覚を持つきっかけになったように思います。
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