小児ホスピスのやりがい
画像出典:exeterhospital.com
小児のケースを受け持ち始めると、私はすぐにその魅力に取り付かれました。
そして、看護師になろうと決意した昔々14歳の頃「小児科で働きたい」と思っていた事を思い出したのです。
子供も絵を描く事も好きで、小児科なら子供と一緒に絵を描いたりもできて、一石二鳥だなどと、そんな子供っぽい事を考えていたのでした。
※ラプレツィオーサ伸子さんの在宅ホスピスナースへの軌跡については「わたしが在宅ホスピスナースになるまで」をご参照のこと。
患児たちは皆かわいく、どの年齢であろうと抱きしめたくなりました。
そして心からこう思いました。
その命がある限り、子供らしく、苦しい思い・悲しい思いをせずに過ごさせてあげたい
セミナーへの参加や、ホスピス緩和ケア協会にある小児ホスピス勉強会のグループに入って情報交換をすることで、自分の持つ知識や技術を最大限に活かせるよう努めました。
親が安心して最後までその子を看られる、かつ、できる限り“普通の生活”を続けられるようにサポートするためです。
患児やその兄弟姉妹達と遊ぶことは、小児ホスピスナースの最も大切な時間です。
ホスピスナースの事を「家に来て遊んでくれる楽しいおばさん」だと思ってもらえたら上出来なのです。
子供は、身体の事を訊かれたり触られたりするのを嫌がるもの。
とはいえ、遊んでいる間にアセスメントは行えますし、親との時間で充分情報を得る事もできます。
また、できるだけMSWと一緒に訪問することで、1人が子供と遊んでいる間にもう1人が親と話すことができ、それぞれ落ち着いた時間を持つことができるのです。
患児に関わっているのは親だけではありません。
おじいちゃんやおばあちゃん、それも母方・父方いらっしゃいますし、その他にもおじさん、おばさんなど、小児ホスピスに関わる家族は立場や受けとめ方は違っても、それぞれの悲しみや苦しみがあります。
患児の年齢が上がればその兄弟達へのサポートもまた、違ってきます。
MSWはカウンセリングのプロとして、患児や家族それぞれにサポートを行うので、ナースは別の観点から支えます。
彼らのadvocate(代弁者、擁護者)であること、寄り添うこと
これが私ができるアプローチだと考えています。
殻いっぱいのかなしみ
ホスピスの子供達が一番悲しいのは、親の悲しむ顔を見ることです。
どんな親でも、見たいのは子供の笑顔です。
子供が笑えば親も笑う。
子供の笑顔は親を笑顔にします。
そして、親の笑顔は子供を安心させるのです。
私達は身体的な苦痛を和らげる事はできても、悲しみを無くす事はできません。
もちろんトータルペインとして、心理・精神的・社会的・スピリチュアルなど様々な角度から痛みを軽減する為にホスピスは多職種で関わりますが、それでも人の心の悲しみは無くすことはできないと思うのです。
小児のケースを訪問する時、私はいつも新美南吉の『でんでんむしのかなしみ』のカタツムリを思い出します。
人は誰もが悲しみの詰まった殻を背負っていますが、その大きさや重さはさまざまです。
そして、誰も代わりに背負ってあげることはできません。
私には、ホスピスの子供や親達がその重さに押しつぶされたり、大きすぎて倒れたりしないように、傍にいて支えることしかできないのです。
それでも時にはでこぼこで、時には緩やかな、ジグザグの道を一緒に歩いて行くことで、少しでも軽く、小さくなればいい―――。
そして別れの後も、その悲しみを背負いながら生きていく心の準備ができる、そんなお手伝いをしたいと思いながら、まだまだ自分の未熟さを思い知る日々であり、小児ホスピスナースとしての修行はこれからも続くのです。
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