本記事の目次
小児在宅医療が登場した背景
ここでは、小児在宅医療という言葉が登場した背景について説明します。
小児在宅医療が登場した背景その1:医療技術の進歩
日本は、この数十年で小児医療を着実に進歩させてきました。
その結果、救命できる子どもが増え、子どもの死亡者は急速に減少し、この30年で約1/4になりました。
死亡率の減少は、特に新生児医療が顕著で、医療技術の進歩により、新生児の死亡率は急速に減少しました。
しかし、世界に誇れる我が国の恐らく誰も予想だにしなかった事態が発生しました。
画像出典:mhlw.go.jp
小児在宅医療が登場した背景その2:重症心身障害児の増加
それは、多くの子どもを救命したがゆえ、救命できたもののさまざまな障害が残った子どもたちの増加です。
その中でも最も障害が重かったのが、自力で歩けない、話せない重症心身障害児でした。
このような子どもたちは、少数存在していたが、その数が増えることになりました。
当時、社会から存在を認知されておらず、生きていくためのさまざまな法制度や社会資源も整備されていなかった重症心身障害児を守るために結成されたのが、「重症心身障害児者を守る会」でした。
その活動は、そのような子どもたちが入所できる重症心身障害児施設を建設することが、大きな目標の一つでした。
画像出典:mhlw.go.jp
小児在宅医療が登場した背景その3:施設の不足
実際、全国に施設は多数できました。
しかし、そこに入所できたのは重症心身障害児の3割といわれています。
ちなみに、重症心身障害児とは、重度の肢体不自由と重度の知的障害とが重複した状態の子どもです。
これは、医学的診断名ではなく、行政上の措置を行うための定義です。
現在は、元東京都立府中療育センター院長の大島一良氏が、 1971年に発表した「大島の分類」という方法により判定するのが一般的です。
「大島の分類」について詳しく知りたい方は【重症心身障がい児とは?~「大島の分類」による定義および今後の課題等~】をチェックしてみてくださいね!
画像出典:mhlw.go.jp
小児在宅医療が登場した背景その4:さらなる医療技術の進歩による「超重症児」の登場
医療技術はさらに進歩し、最も重い障害と思われた重症心身障害児よりさらに別の障害を持つ子どもを産みました。
それが、 医療機器と医療ケアに依存して生活する子どもたちです。
そのような子どもたちは、先述の重症心身障害児にさらに医療 ケアが加わったということで、「超重症心身障害児」略して「超重症児」と呼ばれます。
これらの「超重症児」は、重症心身 障害児の中でも、医学的管理下に置かなければ、呼吸をすることも栄養を摂ることも困難な障害状態にある障害児でした。
画像出典:mhlw.go.jp
小児在宅医療の対象となる子供とは?
次に、小児在宅医療の対象となる子供とはどんな特徴を持つのかを見ていきましょう。
特徴
- ・医療依存度が高い
- ・複数の医療デバイスを使用していることが多い
- ・呼吸管理は気道管理が重要(気管切開など)
- ・成長に従って、病態が変化していく ・重症児の二次障害など
- ・本人とのコミュニケーションが困難なことが多く、異常であ ることの判断が難しい
- ・24時間介助者が必要 独居では生存不可能で数分間も目を 離せない
- ・成長(体験を増やす、できることを増やす)のための支援が 必要
以上の7つが、小児在宅医療の対象となる子供の特徴です。
画像出典:mhlw.go.jp
では、次は小児在宅医療の現状と課題について述べていきます!
▶ 次ページへ:小児在宅医療の現状と課題は??そして気になる今後の展望とは?
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