タクティールケアで広がる認知症看護の工夫 ~4つの工夫を体験談でご紹介~

 

認知症看護には教科書通りの答えはなく、教科書どおりの看護が決して良いともいえません。

だからこそ、個別性を考えながら看護を行っていく必要があります。

 

その点、認知症治療病棟で私が意識して行っている工夫のすべてにタクティールケアがあります。

タクティールケアとは、こちらにもあるように、「手や足や背中を優しく包み込むように触れることで、認知症の人の不安や周辺症状などを和らげる効果があるケア」のこと。

医療行為ではありませんが、人間の手を使ってさまざまなニーズにアプローチすることができます

 

今回は、そんなタクティールケアを通した工夫を、私の体験談に基づいて症状別にみていきたいと思います!

 

「タクティールケア」-認知症ケアー

画像出典;kpidc.org

 

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タクティールケアによる認知症看護の工夫4選

 

タクティールケアによる工夫その1:「食べてない」への返答

 

食事の直後であるにも関わらず、「自分は食べてない!」という方、本当にたくさんいます。

これは認知症の方によく見られる症状の一つです。

脳の満腹中枢に障害がおよび満腹感が得られないことが原因とされています。

 

このようなときは、患者様の気持ちを尊重していくことが大切になってきます。

食べていないという訴えは患者様にとっては、まぎれもなく「事実」なのです。

この「事実」に決して否定することなく、上手に関心をそらせるようにしていきます。

 

「○○さんの食事を今、準備していますから少しお待ちくださいね」という名前を含んだ返答は、認知症の患者様においてはとても効果があります。

これは本人の存在を認める内容も含まれており、タクティールケアによって、さらなる安心感を与え不安を取り除くことにつながるのです。

 

タクティールケアによる工夫その2:徘徊

 

徘徊とは、目的もなくあちこちを歩きまわり、道に迷ってしまうことを指しています。

しかし、徘徊している本人には目的や意味、そしてそれなりの理由があるといわれています。

 

たとえば、自分が会社員だと錯覚して通勤しようとしてしまう場合には・・・。

今日が休みであることを認識してもらうために「テレビやラジオの活用」や「新聞の活用」などが効果的です。

これは残存機能を活用した、視覚や聴覚機能にアプローチしていく方法でもあります。

 

また、入院している患者様の中には帰宅欲求が強い方がいます。

そのような場合には、タクティールケアを通して否定も肯定もせず、「今日はもう遅いから、ここに泊まってはいかがでしょうか」など、納得していただけるニュアンスを含めると、とても効果的です!

 

タクティールケア

画像出典;media.safebee.com

 

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