日本におけるターミナルケアは、まだまだ病院で行われるイメージがありますが、欧米諸国では少し違うようです。
その理由は、国それぞれの考え方の違いや、医療全体の捉え方の違いなどが考えられ、一概には言えません。
しかし、「ターミナルケア」をめぐる日本と海外の違いについて知っておくことは、きっと日本のターミナルケアの発展にとって有益なものとなるでしょう。
今回は、ヨーロッパのターミナルケアに焦点を絞って、概要的にご紹介いたします。
イギリスのターミナルケア:在院日数が非常に短い
イギリスでは、病院滞在期間は日本に比べて驚くほど短いのです。
たとえば、出産の場合には、イギリスの医療の基準で問題ないと判断されれば、翌日にも母子ともに退院となります。
その他の疾患についても、治療が終わった、当面医学的な処置が必要ないと判断されれば退院を促されます。
在宅で過ごすということが当たり前であり、何らかの事情で退院することを拒んでも「在宅での環境を整えるから」と、ソーシャルワーカー等によって至急環境調整がなされ、退院していきます。
患者さんや家族に必要なソーシャルニーズ、たとえば家事や話し相手といった、医療とは別の生活そのもののニーズに対しての支援も整えられます。
イギリスはホスピス発症の地。
ホスピスといっても終の住処というわけではなく、症状をコントロールできたら退院し、住み慣れた我が家で過ごすということも多いのです。
また、在宅に生活の拠点を置きつつ、治療のために通ってくる「デイサービス型」の施設もあるようです。
ドイツのターミナルケア:「在宅」が明確に優先される
ドイツにも日本と同様の社会保険があります。
ただし、日本とは異なり年齢に関わらず同率の医療保険料率が適用されます。
ドイツの社会保険の条文(※日本の介護保険に相当する)では、明確に在宅でのターミナルケアを優先することを打ち出しています。
ドイツでは在宅ホスピスステーションが、在宅での療養生活を支えています。
ホスピスの常勤職員は、対象となる方が在宅で療養生活を送るために必要な在宅介護サービスや看護サービスのコーディネートを行います。
そして特徴的なのが、職員がドイツにおいてはボランティアの側面が強いということ。
ボランティアの役割はケースによって異なりますが、悩み相談であったり、一緒に食事に行ったり、余暇を過ごすなどの場合もあります。
こういったボランティアは必要な研修を受け登録され、また現役世代と呼ばれる若い世代から高齢な方まで幅広い年代が参加しているのが特徴と言えます。
ボランティアは、ホスピスステーションの職員がコーディネートを行っていきます。
※関連論文:藤本 健太郎「ドイツにおける終末期ケア-ネットワークによる在宅高齢者のサポート-」
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