本記事の目次
機能強化型訪問看護ステーションの届出数および届出に係る問題点
これまで、「機能強化型訪問看護ステーションとはなにか?」という点について、基礎的な算定要件についてご説明してきました。
ここからは、届出数の推移や問題点といった「考察」をしていきたいと思います。
全体の届出状況と推移
まず、中央社会保険医療協議会にて報告されている資料から、機能強化型訪問看護ステーションの届出状況について確認します。
下図にて説明されている通り、
- ・機能強化型2の届出数の方が機能強化型1よりも多い
- ・大都市で届出が多い傾向である
ということが確認できます。
画像出典:mhlw.go.jp
機能強化型訪問看護ステーション届出に関する課題・問題点
それでは、機能強化型訪問看護ステーションにおける課題や問題点としてはどのようなことが挙げられるのでしょうか。
中医協が平成27年10月23日に発行した「平成18年度診療報酬改定の結果検証」によれば、機能強化型の届出をしていない理由について、次のような記述がされています。
- ・「機能強化型以外」では「看護職員数が少ないから」が 48.6%、「看取りの件数が少ないから」が 40.7%、「看取りは行っているが、ターミナルケア療養費・加算の算定件数が少ないから」が 22.6%
- ・「主に精神科」では「看護職員数が少ないから」、「24 時間対応体制が確保できないから」、「看取りの件数が少ないから」がいずれも46.2%で最も多かった
「看護職員数の不足」と「24時間対応体制の確保」は密に関係していますので、つまりは「訪問看護師の不足」が原因とみるべきでしょう。
また、「看取りの件数が少ない」という点に関しては、まだまだ看取りそのものの重要性や問題点が明らかにされていないという側面もあるかと思います。
※看取りの具体的な問題点についてはこちらの記事を参照のこと
画像出典:平成18年度診療報酬改定の結果検証(p14)
では、「看護職員数の不足」と「看取り件数の少なさ」のどちらの方が優先して改善されるべきなのでしょうか?
その点、下記の資料にその答えがあります。
すなわち、訪問看護ステーションにとって、(現在では)「看取り件数」のハードルを超える方が難しいということです。
そこで、以下の診療報酬改定の内容へと繋がっていきます。
画像出典:mhlw.go.jp
機能強化型訪問看護ステーションに関する2016年度診療報酬改定
上記の通り、機能強化型でない訪問看護ステーションにとっては、「看取り件数」というハードルをなかなか超えられない現状があります。
そのため、機能強化型訪問看護ステーションに関する2016年度診療報酬改定では、その要件の緩和に努めました。
その内容を以下に示します。
診療報酬改定の概要
機能強化型訪問看護管理療養費の算定要件の年間看取り件数に、在宅がん医療総合診療料を算定していた利用者を含める。*
また、機能強化型訪問看護管理療養費の実績要件において、看取り件数だけでなく、超重症児等の小児を受け入れている実績を評価する。
つまり、看取り件数のハードルを緩和し、「ターミナルケアを行っていても、在宅がん医療総合診療料を算定している利用者数は看取り件数に含まれない」という従来の制度を見直し、そうした利用者を年間看取り件数に加えることになったという点が1点。
2点目は、「小児を受け入れる訪問看護ステーションが、高齢者やがん末期、神経難病等を受け入れてくれる訪問看護ステーションに比して圧倒的に少ない」という現況に鑑み、「機能強化型訪問看護ステーションの施設要件に、看取り件数に加えて超重症児ら小児の24時間受け入れ体制も含めることとした」というものです。
* 「在宅がん医療総合診療料」についてはこちらを参照のこと。
診療報酬改定の具体的内容
本改定に関するポイントは、以下2点になります。
- ①(算定要件の)年間看取り件数に、在宅がん医療総合診療料を算定していた利用者を含めること
- ②超重症児等の小児を受け入れている実績を評価すること
具体的には、下図のような改定が行われました。
機能強化型訪問看護ステーションとは まとめ
以上、「機能強化型訪問看護ステーションとはなにか」についてご説明してきました。
機能強化型訪問看護ステーションに関する論点は多岐に渡るため、もちろん網羅的ではないですが、基礎的な知識については把握できる内容ではないかと思います。
以下に、まとめとして本稿の内容を箇条書きの形でお示しします。
- ・機能強化型訪問看護ステーションは、「地域をケアで支える」だけの規模・機能を持つために創設された
- ・機能強化型訪問看護ステーションには「機能強化型1」と「機能強化型2」の2種類がある
- ・機能強化型2の方が届出数は多く、また、大都市において届出数が多いというのが現状
- ・訪問看護ステーションが届出をしない理由としては、「看護職員数の不足」と「看取りの件数の少なさ」が挙げられる
- ・2016年度診療報酬改定では、「看取り件数」の要件緩和が特徴である(ターミナルケアの件数算定方法の変更/超重症児ら小児の24時間受け入れ体制も、新たに件数に包含)
【PR】
看護師の転職を考えている方は
こちらがオススメです♪
この記事はいかがでしたか? ・週一回なら、まぁ見てもいいかな♪ といった方は是非ご登録をお願いします!!
下記リンクからの無料会員登録で、 メルマガ受け取り@毎週土曜日 診療報酬改定まとめ資料受け取り などが可能になります!! (もちろん、わずらわしい情報は一切お送りしませんよ♪)
|
☆関連お役立ち情報☆ |
☆おすすめのまとめ記事☆ |
・【看護師スキルアップ術まとめ20選】3種の看護スキルでQOLを最大化! |
★ここまでで分からない用語はありませんでしたか? そんな方は・・・
関連する記事
【訪問看護に係る診療報酬改定2016】機能強化型訪問看護ステーションの要件見直し(用語説明付)
平成28年度(2016年)の診療報酬改定では、在宅医療・訪問看護・(ホスピス)緩和ケア・看取りに関する制度改定が多数行われました。今回は、中でも「訪問看護」に関わる改定項目(「機能強化型訪問看護ステーションの要件見直し」)についてご説明します。
『在宅医療・ホスピスのイロハ』 ~第2回:在宅医療とは?(1)~
「在宅医療とは何か」についてストレートに答えているため、概要をつかむには最適の記事です。
「言葉で伝えることは重要である」の本当の理由【名古屋大学大学院・山内豊明教授インタビュー1】
フィジカルアセスメントの権威である、名古屋大学大学院医学系研究科・医学部保健学科の山内豊明教授インタビュー第1回です。山内先生は、「看護のアイちゃん」という訪問看護アセスメントソフトの監修・開発者で、アセスメントに関する著書も多数。看護に関するご説明はさることながら、表現方法・言語化の部分でも学びの多いインタビュー記事となりました。
「虹」の色は何色だと思いますか? 認識論と看護の関係【名古屋大学大学院・山内豊明教授インタビュー2】
フィジカルアセスメントの権威である、名古屋大学大学院医学系研究科・医学部保健学科の山内豊明教授へのインタビュー第2回です!「山内先生がなぜ『伝わる』ことを重要視するようになったのか」という点を皮切りに、過去のご経験について伺っていきます。最後には現役看護師さんへのメッセージもいただきました。ぜひご覧ください。
【暮らしの保健室 秋山正子さんインタビュー第1回】「患者さんにとって本当に必要なことか?」という問い
「あなたが知っている訪問看護師と言えば?」と聞かれたとき、おそらく“必ず”挙がるであろう、秋山正子さんのインタビュー記事第1回です!