現在の「在宅シフト」の頓挫が生む、〇〇な看護師の需要とは?
直前では、在宅シフトの致命的欠陥について触れてきました。
ただし、筆者も方向性としての「在宅シフト」には異論はないということは念のため付け加えておきます。
しかし、目的ないしはビジョンの欠如は、方法論上の誤りを生むことがしばしば。
このままでは構想が立ちいかなくなるおそれが強いのではないかと考えているのです。
では、看護師は今のうちにどのようなことを考慮し、行動すべきなのでしょうか。
「在宅シフト」の頓挫が生む状況とは?
筆者は、「在宅シフト」が頓挫(想定通りに進まない)する可能性が非常に高いとみています。
その理由は、上述したようにビジョンの欠如になります。
つまり、ビジョンが欠如していると、人々にとって制度の必要性が認識しづらいとともに、自分が行動する必要性を感じづらくなります。
その点、特に現在病院で働く看護師さんにとって最も関係するのが、人材でしょう。
すなわち、「訪問看護師やケアマネジャーなどの在宅関連の職種に従事する人数が思いのほか増えない」という状況が容易に予想できます。
すると、しわ寄せがくるのは、(看護分野で言えば)病院勤務の看護師さんしかいません。
つまり、結論としては「病院看護師が『半訪問看護師』(在宅の知識も併せもった状態で、病院と在宅の橋渡しが出来る調整役)になる必要性が急増する」時代が近づいているということです。
では、この想定が正しいとすれば、看護師は具体的にどのようなスキルを求められるようになるのでしょうか。
今後の看護師の需要の考察
そのヒントは、『訪問看護アクションプラン2025』にありました。
アクションプランにて述べられている中で、病院勤務の看護師に提案されている事項を抜き出してみます。
訪問看護師やケアマネジャーが不足する状況になれば、病院看護師には下記のスキルが今以上に求められることとなるでしょう。
アクションプランでも述べられている病院内での在宅との関わり
以下、アクションプランに挙げられている、病院看護師が在宅領域と関わりを持つであろう箇所を抜粋致します。
訪問看護師の安定的な確保
- ●新卒看護師が訪問看護師を目指すことができる教育モデルを確立し、新卒の訪問看護師を確保する
医療機関と訪問看護ステーションの看護師の相互育成
- ●医療機関から地域・在宅へスムーズに療養の場を移行できるよう、医療機関と訪問看護ステーションの人的交流、出向、長期研修等の人材育成システムをつくる
- ●医療機関からの訪問看護がより良く提供されるよう、医療機関の看護師が訪問看護ステーションと交流や学習し合える機会を増やす
訪問看護業務の効率化
- ●ICT(※Information and Communication Technology)を活用し、地域内の多機関・多職種との情報共有を効率化する
- ●ICT化による業務効率化を進めて記録等にかかる時間を短縮させ、訪問看護に専念できる体制をつ くる
看護の専門性を発揮して多職種と協働
- ●多職種と円滑なチームを組むことのできる訪問看護師を育成する。
- ●多職種と協働して質の高いケアを提供できるよう、多職種とともに学び、考える場をつくる。
国民への訪問看護の周知
- ●国民、地域住民に、訪問看護の機能・役割などについて、情報発信をし、国民の理解を得るよう努力する
これらをまとめますと、「積極的に在宅看護領域の知識をキャッチアップし、自分自身で病院内外のネットワークを用いながら活動出来る看護師がますます重要視されるようになる」という予測が立てられるでしょう。
たとえ病院内で働いていても、「病院ではこうだけど、在宅ではこんな弊害があるのではないか」と自ら考え、積極的に様々な職種の方々を巻き込める人物こそが今後は重宝されるのではないかと思います。
※参考記事:【K-WORKER 山上所長インタビュー第3回】「病院と在宅の橋渡し」へ向けて
筆者は、看護師が病院内だけの存在ではなくなる日が近いと感じています。
画像出典:be-nurse.com
ビーナースの立ち位置 ~医療形態4類型~
最後に、やや宣伝的にはなりますが、医療形態を4つに分類したうえで、ビーナースにて得られる知識の領域を図示したものが下図です。
ビーナースを用いて、“個人”が「在宅シフト」を行う際の入口になれれば幸いです。
画像出典:be-nurse.com
看護師が身に付けていたい在宅分野の知識とは 〜まとめ〜
以上、「在宅シフト」の現状と課題、そして「今後はどのような看護師の需要が増すのか」について考察しましたが、いかがでしたでしょうか。
もちろん、経済的側面だけで全てが決まるわけではありませんが、需要があるにも関わらず供給が少ないところは、制度的にも金銭的にも優遇されていくでしょう。
上記はあくまで筆者が調査した所感を述べたものに過ぎません。
上記の考察に対して賛成・反対いずれの感想を持ったかに関わらず、まずは、ビーナースを含めて在宅関連の情報収集をする必要性が増しているのではないでしょうか。
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