平成28年度(2016年)の診療報酬改定では、
在宅領域(在宅医療・訪問看護・(ホスピス)緩和ケア・看取り)に関わる制度改定が多数行われました。
これは、在宅領域が医療・看護・介護業界に関わる”すべて”の方々に大きな影響があることを意味します。
しかし、webサイトでは、政府資料のペーストがされているのみで、情報が整理されているとは言い難いのが実情。
そこで、ビーナースが他サイトに先駆け、「在宅」にかかわる診療報酬改定項目を順次見やすい形に整理していきます。
今回は、中でも「地域包括ケアシステム」に関わる改定項目(「在宅復帰率の要件見直し」)を、用語解説を含めてご説明します!
※公式資料はこちら(本記事に関連するのはp15-17)
画像出典:martindriscoll.com
「在宅復帰率の要件見直し」とは
まずは、「在宅復帰率の要件見直し」の制度的な意味と見るべきポイントについてご説明します。
「在宅復帰率」とは(計算式)
在宅復帰率は、文字通り「率」ですので「A/B (= A÷B)」と表すことが出来ます。
では、AとBはそれぞれ何を示すかというと、下記の通りです。
A:直近6月間に「自宅、療養病棟(在宅復帰機能強化加算(後述)の届出病棟に限る)、居住系介護施設等、介護老人保健施設(いわゆる在宅強化型老健施設、在宅復帰・在宅療養支援機能加算の届出施設に限る)」に退院した患者+療養病棟(在宅復帰機能強化加算の届出病棟に限る)へ転棟した患者
B:直近6月間に当該病棟又は病室から退院した患者(死亡退院・再入院患者を除く)+転棟した患者
※上記は2014年診療報酬改定時の、7対1病棟における算定方法をあえて示しています。
「A」を変更することが今回の改定内容となるためです。
つまり、「退院・転棟した患者」(B)のうち、どれだけが「自宅など」(A)へ帰ることが出来たのかを表す数字です。
ですので、「自宅など」の定義が非常に重要になります。
「在宅復帰率の要件見直し」で見るべきポイント
地域包括ケアシステムにおける位置づけ
ビーナースでは何度もお見せしてきましたが、今回も地域包括ケアシステムの目指す姿を現す図を下にお示しておきます。
今回の「在宅復帰率の要件見直し」でやろうとしていることは、「<現在の姿>の上部を減らすこと」と「<2025年の姿>の下部を増やすこと」です
ただし先述したように、「<2025年の姿>の下部」すなわち「在宅(自宅など)」の定義を決めることが非常に重要になります。
画像出典:厚生労働省資料「平成26年度診療報酬改定の概要」p9
※参考記事
・【地域包括ケアシステムに係る診療報酬改定2016】7対1入院基本料等の施設基準の見直し
・【地域包括ケアシステムに係る診療報酬改定2016】重症患者を受け入れている10 対1病棟に対する評価の充実
在宅強化型でない療養病棟などは最も低い評価のままである点
上記の計算法からもわかるように、7対1からの転院・転倒先として「在宅強化型でない療養」を選択すれば、在宅復帰率が下がります。
そのため、今後在宅復帰率の基準値が75%から引き上げられれば、その病院が7対1の在宅復帰率を満たすことは難しくなります。
逆に言えば、上記の見直しが行われても、転院先としての「在宅強化型の療養」の価値は一定程度維持されることになります。
たとえば「在宅強化型の療養」などが転院先としての価値が極めて低く(例えば最も低い評価とするなど)なると、7対1病院では「自宅」に帰れる人を選別するクリームスキミングが発生しかねません。
しかし、日本慢性期医療協会の武久洋三会長によれば、
「在宅強化型の療養病棟」への転棟が一定程度評価される限りにおいては、7対1病院が患者さんを意図的に「選ぶ」という事態は深刻化しないだろうとの見解を示しています。*
* 参考・引用元はこちら。
なお、「クリームスキミング」とは、「収益性の高い分野のみにサービスを集中させ「いいとこ取り」をすること」です。
画像出典:blog.goo.ne.jp
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