平成28年度(2016年)の診療報酬改定では、
在宅領域(在宅医療・訪問看護・(ホスピス)緩和ケア・看取り)に関わる制度改定が多数行われました。
これは、在宅領域が医療・看護・介護業界に関わる”すべて”の方々に大きな影響があることを意味します。
しかし、webサイトでは、政府資料のペーストがされているのみで、情報が整理されているとは言い難いのが実情。
そこで、ビーナースが他サイトに先駆け、「在宅」にかかわる診療報酬改定項目を順次見やすい形に整理していきます。
今回は、中でも「地域包括ケアシステム」に関わる改定項目(「退院支援に関する評価の充実」)を、用語解説を含めてご説明します!
※公式資料はこちら(本記事に関連するのはp103-108)/ 以下多分に公式資料より引用部分が含まれています
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画像出典:usnews.com
「退院支援」について
まずは、「退院支援」の基本事項についてご説明していきます。
「退院支援」とは
まず、退院支援という言葉のご説明になりますが、京大病院地域ネットワーク医療部によれば、下記のように定義されています。
入院患者が、適切な期間に適切な医療を受け、退院後も安全な療養が継続できるよう入院時から取り組む患者・家族へ提供されるケア
では、「退院支援」とは具体的にどのようなものかという点を以下述べていきます。
「退院支援」の3つのプロセス
退院支援の定義は上記の通りですが、そのプロセスは下記3つに分けられます。
第1段階:スクリーニング
→入院時に退院支援の必要になる患者であるか、特定を行います
※入院時の情報収集を行う際に担当看護師が実施する「入院時スクリーニングシート」のサンプルも配布されていますので是非ご参考下さい!(なお、ここで何か一つでもチェックがついた場合には、看護計画を立案するのが、京大病院地域ネットワーク医療部の方法だそう)
第2段階:退院支援の方向性を決定
→患者に提供される検査・治療・リハビリ等の状況から、『退院後も継続する医療管理・医療処置は何か』『ADL・リハビリ進行状況から必要な介護は何か』を主治医・リハビリ担当者と検討し、患者・家族との共有・退院後提供できる方法を検討。受け持ち看護師が中心になり、チーム内でサポートします。
第3段階:退院調整
→チーム内で退院支援の方向性が固まったら、介護保険などの制度を申請して訪問看護などの地域サービスの調整を行います。また同時に患者さんと家族に退院指導も行っていきます。
画像出典:kango-world.com
「退院支援」のフローとキーパーソン
上述した退院支援の定義や3つのプロセスをご覧になれば分かるように、退院支援の論点は非常に多岐に渡ります。
本記事では、退院支援のフローと登場人物について理解しておきましょう!
退院支援のフロー
退院支援には、上記のように3つのプロセスがありますが、具体的にはどのようなプロセスなのでしょうか。
良くまとめられている図を2種ご紹介します。
1つ目は場合分けがされた図です。
病院勤務の看護師の方は、自分の病院はどんな体制なのか思い起こしながら見てみるとよいでしょう。
※「MSW」とは、医療ソーシャルワーカーのことで、病院などに勤務し、患者から寄せられるさまざまな相談に応える相談援助職のことを言います。
画像出典:cabrain.net
2つ目は、これをもう少し具体化して図示したものです。
退院支援・退院調整にご関心がある方は、自分がどのフローを行いたいのかという点を意識してご覧になると良いでしょう。
画像出典:kangobu.com
退院支援のキーパーソン
(2011年度のものになりますが)「退院調整看護師に関する実態調査報告書」によれば、下記のように述べられています。
558 病院において、退院調整部門に配置されている職員の職種は、「医師・歯科医師」が 26.3%、「看護師」が 84.2%、「医療ソーシャルワーカー」が86.9%、「事務」が 41.4%だった。「社会福祉士」の配置は 70.4%だった。
いずれの病床規模も「医療ソーシャルワーカー」「看護師」の配置率が高く、また、病床規模が大きくなるほどいずれの職種も配置率が高くなる傾向がみられた。
また、病院内のこれらの職種に加えて、病院外の「ケアマネジャー」や「在宅ケアスタッフ」もキーパーソンとして挙げられるでしょう。
画像出典:退院調整看護師に関する実態調査報告書
なお、同資料には、「看護師」の専門看護師・認定看護師の取得割合についても述べられています。
退院調整部門の看護師について、専門看護師・認定看護師等かどうかたずねたところ、「有り」が 5.7%だった。
具体的には、「訪問看護」認定看護師が 16 件で最も多く、次いで「緩和ケア」「皮膚・排泄ケア」がそれぞれ4件だった。
今後、専門看護師・認定看護師の取得者は確実に増していきます。
退院支援・退院調整に興味がある方は、こちらの取得を取得しておくことは必ず役にたつでしょう。
→参考:認定看護師(訪問看護分野)を取ることで生まれる変化5選
「退院支援」が注目されている理由
近年の「在宅シフト」により、「退院支援」は大変注目を浴びてきています。
その主な理由の一つが、診療報酬上の保護になります。
ですので、退院調整に関する項目を理解しておくことは、非常に重要なのです。
「退院支援に関する評価の充実」の概要
それでは、「退院支援に関する評価の充実」の改定項目の内容に触れていきましょう。
本改定の趣旨
地域包括ケアシステムの推進と医療機能の分化・強化、連携
本改定の基本的な考え方
退院支援の更なる推進を図るため、保険医療機関における退院支援の積極的な取り組みや医療機関間の連携を推進するために評価を行う。
改定項目概要
1.病棟への退院支援職員の配置を行う等積極的な退院支援を促進するため、現行の退院調整加算を基調としつつ実態を踏まえた評価を新設する。
2.退院調整加算について、入院日数に応じた評価を廃止するとともに名称を改める。
3.現行の新生児特定集中治療室退院調整加算を基調としつつ、新生児特定集中治療室に入院した患者に対する退院支援に関する評価を新設する。
4.現行の地域連携診療計画管理料等を基調としつつ地域連携診療計画を策定・共有した上で、医療機関間の連携を図っている場合についての評価を新設する。
5.退院調整加算を発展的に見直したことに伴い、一部の算定回数が少ない項目については廃止することとする。
「退院支援に関する評価の充実」の具体的内容
上記5つの改定ポイントを順にお伝えします。
1.現行の退院調整加算を基調としつつ実態を踏まえた評価を新設
2.退院調整加算について、入院日数に応じた評価を廃止するとともに名称を改める
3.新生児特定集中治療室に入院した患者に対する退院支援に関する評価を新設
4.医療機関間の連携を図っている場合についての評価を新設
5.一部の算定回数が少ない項目については廃止
[廃止する項目]
- (1) 新生児特定集中治療室退院調整加算
- (2) 救急搬送患者地域連携紹介加算
- (3) 救急搬送患者地域連携受入加算
- (4) 地域連携認知症支援加算
- (5) 地域連携認知症集中治療加算
- (6) 地域連携診療計画管理料
- (7) 地域連携診療計画退院時指導料(I)
- (8) 地域連携診療計画退院時指導料(Ⅱ)
「退院支援に関する評価の充実」 まとめ
以上が、「地域包括ケアシステム」に関わる診療報酬改定項目(「退院支援に関する評価の充実」)の整理になります。
まだまだ改定から間もないため、独自の解釈は控えております。
今後、業務等で改定にかかわる疑問が出てきたときには、ビーナースでざっと把握していただければ幸いです。
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