ホスピスナースの基本は、1にも2にもコミュニケーション
ホスピス看護の基本はコミュニケーションです。
どんなに知識や技術があっても、患者さんや家族と良いコミュニケーションが取れなければ、それを生かせないこともあります。
良いコミュニケーションをとる為には、見る、聞く、話す、触れる、と言った感覚を最大限に使います。
相手を感じ、理解し、それに対して自分の意思を正確に伝え、それがちゃんと伝わった事を確認する。
その為にはまず、相手の声を聞き、話を聴く事が何よりも大切だと思っています。
ちなみに、わたしは昔からどちらかと言うと暢気(のんき)なマイペースで、比較的アドレナリン分泌量の少ないタイプでした。
話をするよりも聞くほうが得意で、そのためか、お年寄りや小さい子供に好かれる方だったと思います。
そういう意味では、わたしはホスピスナースとしての適性があったのかもしれません。
ただし。
ホスピスナースは、患者さんや家族の人生の中で、最も辛く苦しい時に、その人達のとても個人的な部分に関わる仕事。
ですから、まずはその人を知る事、そして、相手と信頼関係を築く事は仕事の「生命線」ともいえるほど重要であることは再度強調しておきたいと思います。
患者さんや家族が、「ああ、この人は自分を分かってくれているな」と感じ、「この人は専門的な知識を持っているな」と認め、「この人は責任を持って仕事をしているな」と信用し、「この人の言う通りにしていれば安心だ」と思えるナースは、自分の人生の最後の日々を託すに足る相手として、信頼を得ることが出来ます。
繰り返しになりますが、その為に良いコミュニケーションを取る事は、不必要な誤解を防ぎ、相手の不安や痛みを軽減することにも繋がるのです。
ホスピスケアの最大の目的とは
「痛み」とは、身体的なものだけではありません。
その人からあらゆる苦痛を取り除き、心も身体も安らかに人生をまっとう出来るようにサポートする。
つまり、身体的、心理的、社会的、そして精神的或いはスピリチュアルな面を含む、多面的な苦痛が軽減され、患者さん本人、そして患者さんの家族が、死を受け入れられるようになる。
これが、ホスピスケアの最大の目的です。
そうした包括的なケアを提供する為に、ホスピスはナースだけではなく、MSW、医師、チャプレン、ホームヘルスエイド、ボランティアなど多職種からなるチームとして、患者さんや家族に関わります。
その中で、ナースはケースマネージャーとして、これら他職種との連携をコーディネートする、チームの中心的役割を担っています。
それぞれの専門家達と密にコミュニケーションを取る事で、より深く患者さんや家族を理解する事が出来るし、自分自身のアプローチも変わってくることもあるのです。
もちろん、ナースが患者さんの心理的、精神的、社会的な部分に直接触れないわけではありません。
それでもやはり、それぞれの専門家が関わる事でケアはよりリッチになり、私達が出来る事の範囲や可能性も広がるのです。
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