平成28年度(2016年)の診療報酬改定では、
在宅領域(在宅医療・訪問看護・(ホスピス)緩和ケア・看取り)に関わる制度改定が多数行われました。
これは、在宅領域が医療・看護・介護業界に関わる”すべて”の方々に大きな影響があることを意味します。
しかし、webサイトでは、政府資料のペーストがされているのみで、情報が整理されているとは言い難いのが実情。
そこで、ビーナースが他サイトに先駆け、「在宅」にかかわる診療報酬改定項目を順次見やすい形に整理していきます。
今回は、中でも「地域包括ケアシステム」に関わる改定項目(「7対1入院基本料等の施設基準の見直し(一般病棟用の「重症度、医療・看護必要度」の見直し)」)を、用語解説を含めてご説明します!
※公式資料はこちら(本記事に関連するのはp8-11)
本記事の目次
「7対1入院基本料」について
まずは、「7対1入院基本料」の用語説明になります。
「7対1病床」の説明のほか、地域包括ケアシステムにおける位置づけを開設した後、7対1病床の近年の推移についてみていきたいと思います。
「7対1入院基本料」とは? ~「7対1看護配置」の説明を含めて~
7対1看護配置とは
平成18年度診療報酬改定により新設された「7対1看護配置」とは、入院患者様7人に対して常時看護師1人以上を配置するというものです。
従来の「10対1看護配置」よりも手厚い看護体制であり、高度医療への対応、医療安全の確保を図ることにより、より安全で信頼できる看護の提供が可能とされています。
一般病棟入院基本料とは
一般病棟(療養病棟入院基本料、結核病棟入院基本料又は精神病棟入院基本料を算定する病棟以外の病院の病棟)で、
看護配置、看護師比率、平均在院日数その他の事項につき下記の厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして
保険医療機関が地方厚生局長等に届け出た病棟に入院している患者(第3節の特定入院料を算定する患者を除く。)について、
当該基準に係る区分に従い、所定の点数が定められています。
ただし、通則第6号に規定する保険医療機関の病棟については、この限りではありません。
この、「一般病棟入院基本料」について分かり易く図示したものが下図になります。
※ただし、点数等は2010年時点のものです。あくまで全体像把握に用いて下さい
画像出典:「はじめて学ぶ病院経営のしくみ」
7対1入院基本料の施設基準
- 1.当該病棟において、一日に看護を行う看護職員の数は、常時、当該病棟の入院患者の数が七又はその端数を増すごとに一以上であること。
ただし、当該病棟において、一日に看護を行う看護職員の数が本文に規定する数に相当する数以上である場合には、
各病棟における夜勤を行う看護職員の数は、本文の規定にかかわらず、二以上であることとする。 - 2.当該病棟において、看護職員の最小必要数の七割以上が看護師であること。
- 3.当該病棟の入院患者の平均在院日数が十八日以内であること。
- 4.看護必要度の基準を満たす患者を一割五分以上入院させる病棟であること(救命救急入院料を算定する治療室を有している保険医療機関の病棟を除く。)。
- 5.常勤の医師の員数が、当該病棟の入院患者数に百分の十を乗じて得た数以上であること。
※上記の引用元
地域包括ケアシステムにおける「7対1病床」の位置づけ
現在の病床の構成は7対1の病床が最も多く、次いで療養型となっています。
そのため、それらを順に並べてみると、下図(左部)のようにワイングラスのような構成になっています。
つまり、間にいるべき亜急性期、回復期が不足しているという構図で、在宅復帰の妨げになっていると言われています。
また、急性期は医療費が高く、地域包括ケアシステムの大目的の一つである「医療費の削減」にとっても障害となります。
地域包括ケアシステムでは、これを2025年までにこけしのような形まで持っていくという目標を掲げています。
その一環、つまり急性期病院を出来るだけ亜急性期か回復期にシフトさせるというのが、本診療報酬改定の本質です。
画像出典:厚生労働省資料「平成26年度診療報酬改定の概要」p9
7対1入院基本料の届出病床数と対象患者数
14年度の前回診療報酬改定改定では、主に7対1入院基本料について、▽特定除外制度の廃止▽看護必要度の見直し―など、大きなメスが入りました。
この結果、7対1病床は改定後に減少し始めました。
また、7対1病院のうちDPC病院では、14年度改定の前後で7対1入院基本料の算定患者が減少していることが、厚生労働省から14日の中医協総会に報告されています。
※引用元
画像出典:medwatch.jp
「7対1入院基本料等の施設基準の見直し」(一般病棟用の「重症度、医療・看護必要度」の見直し)の概要
それでは、「7対1入院基本料等の施設基準の見直し」の改定項目の内容に触れていきましょう。
本改定の趣旨
地域包括ケアシステムの推進と医療機能の分化・強化、連携
本改定の基本的な考え方
「重症度、医療・看護必要度」について、現行の基準を満たす患者以外にも、医療の必要性が高い患者も多くみられることから、
手術直後の患者、救急搬送後の患者、無菌治療室での管理、認知症・せん妄の患者等を含め、
急性期に密度の高い医療を必要とする状態が「重症度、医療・看護必要度」等において適切に評価されるよう、見直しを行う。
改定項目概要
1.一般病棟用の「重症度、医療・看護必要度」について、急性期に密度の高い医療を必要とする状態が適切に評価されるよう、項目及び基準の見直しを行う。
2.一般病棟用の「重症度、医療・看護必要度」の項目の見直しに伴い、各入院料の施設基準に定められている該当患者割合要件について、見直しを行う。