本シリーズ第2・3回「在宅医療とは?」および第4回「ホスピスとは?」では、、在宅医療とホスピスの双方の領域にて、様々な論点があるということが分かりました。
しかし、この両者は「社会全体のウネリ」が直接的に影響するため、一朝一夕で問題が解決できるわけではなく、大変扱いが難しいと考えられます。
「社会全体のウネリ」というのは、たとえば下図で示されるような「少子高齢化」のことです。
画像出典:panahome-neos.com
このように、これまでの前提に加え、私たちの社会全体にさらなる大きな変化が訪れようとしています。
では、この大きな変化に対して、我が国の行政はどのような施策を講じようとしているのでしょうか?
今回、そして次回(第6回)にわたり、医療従事者にとっても生活者にとっても避けては通れない行政の問題を一緒に考えてみましょう。
※扱うトピックは、今回が「在宅療養支援診療所」、次回が「地域包括ケアシステム」になります。
画像出典:sangiin.go.jp
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『在宅医療・ホスピスのイロハ』の目次
第5回 在宅医療・ホスピスに関する近年の行政の動き(1)
第8回 シリーズまとめ ~在宅医療・ホスピス業界に必要なこと~
「在宅療養支援診療所」(在支診)とは?
まず、2006年に診療報酬が認められた「在宅療養支援診療所」について見ていきましょう。
「在宅療養支援診療所」(在支診)とは?
在支診について
在支診とは、「自宅療養をされる方のために、その地域で主たる責任をもって診療にあたる診療所のこと」です。(参考:あいホームケアクリニック)
在支診の要件は、下記の通りです。(厚生労働省資料による)
こちらは、在支診の業務について知る重要な材料になりますので、そのまま引用しておきます。
- 保険医療機関たる診療所であること
- 当該診療所において、24時間連絡を受ける医師又は看護職員を配置し、その連絡先を文書で患家に提供していること
- 当該診療所において、又は他の保険医療機関の保険医との連携により、当該診療所を中心として、患家の求めに応じて、24時間往診が可能な体制を確保し、往診担当医の氏名、担当日等を文書で患家に提供していること
- 当該診療所において、又は他の保険医療機関、訪問看護ステーション等の看護職員との連携により、患家の求めに応じて、当該診療所の医師の指示に基づき、24時間訪問看護の提供が可能な体制を確保し、訪問看護の担当看護職員の氏名、担当日等を文書で患家に提供していること
- 当該診療所において、又は他の保険医療機関との連携により他の保険医療機関内において、在宅療養患者の緊急入院を受け入れる体制を確保していること
- 医療サービスと介護サービスとの連携を担当する介護支援専門員(ケアマネジャー)等と連携していること
- 当該診療所における在宅看取り数を報告すること 等
画像出典:mediva-hhc.jp
機能強化型在支診
さて、上記要件を満たせば、晴れて「在支診」として医療を提供できるわけですが、実は在支診にはもう一つの形態があります。
それは、2012年の診療報酬改定によってその引き上げ対象となった、「機能強化型在支診」です。
機能強化型在支診は、上述した要件に加えて、下記の3要件を満たすことで認定されます。
- 所属する常勤医師が3名以上
- 過去1年間の緊急の往診実績5件以上
- 過去1年間の看取り実績2件以上
(複数の医療機関が連携して、上記基準を満たすことも可能→その場合の要件は以下4つ) - 患者からの緊急時の連絡先の一元化
- 月1回以上の定期的なカンファレンスの実施
- 連携する医療機関数は10未満
- 病院が連携する場合は200床未満に限る
※上記、病床を有する場合は高い評価がなされる
さらに、機能強化型在支診は、下記の2種類(単独・連携)に分かれます。
- 単独・・・他の診療所との機能連携は図らず、上記条件を診療所単独で満たし、24時間365日連絡のつく体制を整えている診療所のこと
- 連携・・・他の在宅療養支援診療所で診られている患者様と当院の患者様の情報を共有し、互いの緊急時に連携し往診へ伺う診療体制を整えた診療所のこと
この機能強化型在支診のイメージは下図の通りです。
画像出典:mhlw.go.jp
(参考:川崎高津診療所)
在支診の役割
在支診は、在宅医療において中心的な役割を担うことが期待されています。
具体的な役割としては、「患者・家族に対する窓口」、あるいは、「必要に応じて他保険医療機関等との連携を図りつつ24時間体制の往診や訪問看護等との提供体制を確保すること」などが求められています。
診療報酬の内容と制定当初の様子
2006年4月からの診療報酬改定では、「在宅療養支援診療所」というカテゴリーが新設され、
医師や看護師が24時間訪問できる体制を作るなどの条件を満たせば「患者さんを在宅で看取った場合に1万点(10万円)の加算を受けられる」など、
医療機関はそれまでより多くの収入を得られるようになりました。
全体では診療報酬が引き下げられる中、このように在宅医療が優遇されるのは、特に老人の終末期医療について、入院より在宅の方が安くつくと厚生労働省がみているからです。
ただし現場で在宅医療に携わる人たちは、医療費抑制の側面ばかりが強調されるのに違和感を抱いていると共に、これで本当に在宅医療の担い手が増えるのか疑問符がついていたようです。(参考:ロハス・メディカル)
実際にどうか、、、どうやら、その疑問は概ね当たっていると言えそうなのです(詳しくは第7回に譲ります)。
→第6回に続く
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